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イラク戦争の検証を改めて考える

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2018年11月20日、情報公開クリアリングハウスを原告とするイラク戦争検証報告書情報公開訴訟の東京地裁(民事38部 朝倉佳秀裁判長)判決がありました。
これは、2012年12月21日に外務省が行った「対イラク武力行使に関する我が国の対応」を外務省が発表しましたが「報告の主なポイント」(A4 4ページ)を公開したのみで報告書自体は未公表としたことに対し、情報公開を求める訴訟が行われたものです。
 判決は、原告側の敗訴でした。
「対イラク武力行使が国際政治上および、各国の安全保障政策上機微な問題」と認定。
非公開になっている部分は「機微な情報である」り、公開すると支障の恐れが推認されるとしました。

詳しくはこちら
判決を受けて、情報公開クリアリングハウスより「イラク戦争検証報告書情報公開訴訟判決とイラクの今」という報告会が22日に開催され、特別講演を依頼されました。

当初全く非公開とされていたものが、裁判の過程で一部黒塗りで公開されたものをいただき、
私なりに考えてみました。

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まずここ。総括したのが在米日本大使館特別全権公使の石川和秀。
当然、おおむね日米関係はよくなったというような検証結果にならざるを得ない。

石川和秀氏をググってみると「東京都生まれ。1980年東京大学教養学部を卒業、外務省入省。経済協力局政策課企画官、経済局国際機関第二課長、総合外交政策局企画課長、在タイ日本国大使館公使、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、総合外交政策局総務課長、内閣官房内閣参事官等を経て、2008年外務省アジア大洋州局審議官。2009年デトロイト総領事。2010年在アメリカ合衆国日本国大使館特命全権公使。2012年外務省アジア大洋州局南部アジア部長。2014年から駐フィリピン特命全権大使として2025年万国博覧会の大阪招致構想実現のためのフィリピン政府への働きかけなどのために動き、2017年からは政府代表、特命全権大使(関西担当)」
というわけでアラブ諸国や中東地域での経験はなさそうです。

 対イラク微力行使にいたる経緯・背景
1)イラク戦争の経緯
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いままで政府は、安保理決議に基づいて行われた攻撃で、国連憲章に合致するといってきました。
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これは、外務省が2004年ごろに作って一般に配っていたパンフレットです。
それに比べると経緯に関しては、そこそこ客観的に書かれています。
国際社会の情勢・・・100%黒塗り
日本の状況・・・911以降テロとの戦いを支持しインド洋に給油を行っている主旨。60%くらい黒塗り

2)日本の検討過程、外交努力
一か所気になるところ
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確か共同がニュースにしていたように思いますが、カメルーンやアンゴラ、ギニアなどの途上国には、安保理の第二決議案に賛成する見返りとしてODA援助をちらつかせたとの記事を読んだことがあります。

3)情報収集
最大努力に勤めていた。あとは全部黒塗りで
➡大多数の国が少なくとも化学兵器と生物兵器の隠匿の可能性を認識していた
の部分が開示。

4)分析
100%黒塗り

5)政策決定

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これは特に日本の外交成果とは言い難い気がします。
隠れているところは、機微な内容がかかれている可能性が高いと思われます。

 

6)米国以外の対応
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イラクの前にはこのスペースだと句点が入るので、2文字の国でしょうか?

7)武力行使の法的根拠は 「国連憲章に合致している」というのが先のパンフにも書いてあります。これは明らかに嘘。安保理で決議されなかったわけですから。ここではその誤りを認めているのかどうかがポイントですね。

 

8)武力行使支持の理由は黒塗り
日米関係を優先したと書かれているかどうか。
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9)国民への説明責任
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わかりやすく解説した資料というのが気になります。
イラク戦争が始まる前に外務省のHPには以下のような説明がありました。
アメリカ大使館のHPの引用のようです。

どうしてイラクを攻撃するのか?
1)イラクが大量破壊兵器とその運搬手段である弾道ミサイルを開発・保有している強い疑いが存在する。
2)イラクはイランとの戦争でイランに対し、また、88年自国民に対して化学兵器を使用した実例があるとされている。
3)無差別かつ高度な殺傷能力を持つこれらの兵器のイラクによる保有・使用は国際の平和と安全に対する大きな脅威となる。これは国際社会全体の深刻な懸念である。
4)また、これらの兵器が国際テロリストの手に渡ることは、2001年9月11日の同時多発テロ事のような大規模無差別テロを再発するおそれがある。

不確かな情報をもとに、アメリカのプロパガンダを垂れ流した罪は重いといえます。
当時のHPがどのような内容であったのか、開示してほしいですね。
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一体誰でしょう?有識者とは?そこは、調べればわかりますね?

さて最後
7.教訓と今後の取り組み
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ここが黒塗りになっていて、国民の説明責任に関する今後の取り組みが黒塗りだとはどういうことでしょうか?

さていろいろと書いてきましたが、教訓を生かすのであれば、やはり黒塗りの部分を開示すべきです。これでは、今後の日本外交に期待できません。
最後に小泉純一郎さんが最近上梓された「決断の時」に書かれている一文を紹介します。
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小泉純一郎元総理は、トモダチ作戦に参加し、被爆したアメリカ兵に会い涙を流しました。もし、意味のない戦争に駆り出されて、PTSDになりいまだに社会に適応できず自殺していく米兵を実際見舞ったらどうなのだろうか?もし、在職中にイラクを訪問し、米軍に手足をもぎ取られた子どもに実際会っていたらどうだったでしょう。

イラクに行きたがっていた首相が、一度もイラクの土地を踏まなかったのはなぜでしょうか?
クリアリングハウス

これだけの犠牲者を生み出したイラク戦争。フセインのせいだといえますか?
アメリカが既にイラク戦争は間違いであったことを認めているわけですから、15年もたち機微な部分などいったい何があるというのでしょう。
日本の責任は大きく、そこから学ぶ教訓もたくさんあるはず。
クリアリングハウスは東京高裁に控訴し、係争していくそうです。
黒塗りの部分が開示されることを期待します。

事務局長 佐藤真紀

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